糸色望の朝は早い。夜明けと共に・・・とまではいかずとも大抵日が昇って少しもすれば起床した。毎朝アラーム要らずで、静かに起きる。この日も望は浮遊してきた意識のままに目を開けた。やや肌寒くなってきたことに季節の変わり目を知る。
着替えて、顔を洗い歯を磨く。すっきりした所で台所に入る。自分の分の他に、夏目や臨也、N等の弁当を用意するのはもはや日課だ。自分の料理を美味しい、美味しいと言って食べてくれるのだから、毎朝面倒くさいとは思わなかった。今日は何を入れようか。そんなことを考えるのも楽しい。
そこで、あ、と望は思い出した。家庭菜園しているホウレンソウがそろそろ採れる時期のはずだ。いそいそとケータイを持ち出して望は勝手口から外に出た。吐息がふわっと白くなる。
望@nozomu
臨也くんと育ててたホウレンソウが採れました。今日のお弁当に使おうと思います。
早朝の空に映えたホウレンソウを望はアップロードしてツイッターに流した。すぐにお気に入りとリプライが返ってきた。まるで光の速さである。
甘楽@kanra
@nozomu わーい!楽しみにしてるね!^□^
銀子@15pafe
@nozomu あqwせdrftgyふじこ
望はそっと見なかったことにし、ほかのツイートを何とはなしに見た。まだ早朝のためか、タイムラインの流れは遅い。他愛の無い友人同士のリプライ、誰宛とも取れぬ独り言、昨夜からのそれが連なる中、望は一瞬瞠目した。
N@natural
公園なう。最近ではボクの姿を見ると鳩から近寄ってくるようになりました。
Nは規則正しい生活を送る、しかしややぼんやりとした子である。その子が「公園なう?!」何時だ?!と思い、送信時間を見れば丁度望が起きた時間帯だった。
大量の鳩に近寄られておきながら恐怖も感じず寧ろ嬉しがってるNの姿が容易に想像できる。望は決めた。今日の彼のお弁当はマメパトのキャラ弁にしようと。