「僕、体育って苦手なんですよね」
もはや定例となっている放課後のカラオケでの報告会で、黒子は突如としてそう切り出した。
バスケやドッチボールではその影の薄さを利用して幾人かに頼られているというのに、だ。
まぁ、体力がないのはここにいる誰もが知っているのだが。
銀子、アリババ、燐が一瞬困惑を顔に載せる。
「だって、どんなにシズイザが展開されてようとツイートもラインも出来ないじゃないですか」
ガシャァァァン
銀子の手に握られていたグラスが割れた。この前も割ってしまったのでそろそろ出禁をくらうのではないかとアリババは密かに心配をしている。
「多少は出来ますけどね、やっぱり体育の授業中は逐一報告できなくて困ります」
困っているのはきっと体育の先生だろうが、残念ながらここに居る面子ではそこに配慮は至らなかった。それどころか、「そうなんだよねー」と共感してしまう始末である。
「え、何。シズイザがどうしたんだ?!今日のシズイザについてkwsk!!!!!!!!」
「そうだぞ黒子、もったいぶらないで教えてくれ!」
銀子に因って割れたコップから溢れたジュースを誰も拭きやしねぇ。床は既にベトベトだった。シズイザが気になるのもそうだが、溢れたものがカルピスなのがその原因だ。白いのが溢れてる!!!!!!!!アリババはシズイザの話を聞く前に色々と限界だった。
「今日、体育で時間が少し余ったので急遽ドッチボールをしたんです。まぁ、当然シズイザは別チームですし対戦しますよね。「今日こそぶちのめす」とかやる気満々な平和島くんと「やれるもんならやってご覧よ、シズちゃん」って折原くんが挑発するわけですよ。何なんですか“今日こそ“って。何で挑発してんですか、平和島くんのボールとれないのに!取れないくせに!ドッチボールなのに、平和島くんは折原くんしか狙わないし、折原くんはひょいひょい避けるし「どこ狙ってんのシズちゃん」とか嘲笑ってるし....ホモ美味しかったです」
頬に朱を走らせる黒子は、いつにも増して饒舌でどこかイキイキしているせいで、どこぞのホモデルが見たら発狂しそうな様子だが、話してる内容はホモだ。その上「しかもですよ」と口にした。シズイザホモには続きがあったらしい。
ガタッと銀子が反応する。
「今日の!折原くんの弁当は!望さんの手作りでした!嬉しそうに自慢してたのでミスディレして写真撮ったので後で送りますね」
「黒子GJ!!!!!!!!」
「ミスディレの無駄遣いwwwwww」
「そんなこと言う人にはあげませんよ、アリババくん」
「ごめんなさい」
この二人も美味しいprprと燐がケータイを構えたところで、既に連写を終えた銀子が「そういえば」と口にした。3人が一斉に銀子を見ると、彼女は形の良い唇をニヤリと歪めさせた。
細められた目が妖艶に光る。せっかく見目が綺麗なのに勿体無いとは思うが、続きが気になるので黒子は口にはしなかった。
「夏目の今日の昼飯も望の手作りだったらしくて、キセリョが夏目の使ってた箸で卵焼き食うもんだから、リアルに鼻血出てやばかった....」
「た、田沼の目の前でか?!」
「そうだ!」
「やべぇぇぇ!!!!!!!!今日はお仕置きですか?!」
興奮でアリババが立ち上がったので、テーブルが僅かにガタついた。報告が上がる度に、それぞれが落ち着かないので、テーブルの上はびしょ濡れである。
その上、カラオケに入っ てそろそろ1時間が経とうとしているが、誰一人として未だに歌ってはいない。だって報告会だもの。
ちなみに、この四人が来る度に受付のお姉さんが密かに悶えてるのは彼らの預かり知らぬところである。