スマートフォンをタップしてカレンダーを開き、今日、明日の確認をする。メールも着信も特に入ってはいなかったので、今日はこのまま夕方からコンビニのバイトだ。ちなみに明日は金曜日なので、ファミレスのバイトの後にコンビニのが朝まである。後ろ盾のない学生の身分だし、生活費、薄い割に高い本のためならば仕方がないというものだ。
定例会に主席できる回数は他の3人と比べれば少ないが、ラインで情報は得ているし妄想ネタに抜かりはない。
今日も田夏は美味しかったです!ご馳走様です!
誰にでもなくお辞儀すらしたくなったが、そこはさすがに抑えた。ミスディレクション出来ないし。
「ねぇ、アリババくん」
くいくい、と小さな手に腕を引かれたのはそんな時だ。青い髪色の下に同じ色の瞳がアリババを見上げていた。アラジンだ。
「どうしたんだよ、アラジン?」
ふとしたことから仲の良くなったアラジンは、アリババが腐男子であることを感じ取っては居ても傍に居てくれるよく出来た人間だ。
ふわふわと跳ねるやわらかな髪の毛を後ろで三つ編みにしてやるのは、毎朝のアリババの仕事で今もそれは彼の背中に垂れている。(一度ふざけてアンテナみたいに髪の毛を一房立てようとしたら無表情を浮かべて顔を左右に振るのでそれ以来していない)
アラジンはにこりと笑って、アリババの腕を更に引っ張り顔を近づけさせた。
「君の趣向に口を出すつもりは無いけど、たまには僕とも遊んでおくれよ。僕とアリババくんが遊んでも黒子お兄さんたちに萌とやらは補給できるだろう?」
「?!?!」
口を出さないと言われた側からいきなり言われた気がするのは気のせいだろうか。というか、アラジン、お前の口からそんなの聞きたくない。
「原作で黒子お兄さん(中の人繋がり、白龍お兄さん)に、僕はアリババくん贔屓って言われてるんだよ?寧ろ僕とアリババくんは遊ぶべきじゃないかい?今も連写してるだろうしね!」
「!?!?」
「燐お兄さんたちばっかり狡いよ!僕だってアリババくんと遊びたい!ホモの良さは分からないけど、仲良くしてるだけでそう見えるなら、僕とアリババくんなら大丈夫だよね!」
「え、いや、普通に遊ぶけど、俺、お前の口からそんなの聞きたくないんだけど?!」
何この子怖い。
銀子や黒子は何でもそういう風に見るらしいが(俺もそうだけど)、いや、でもホモデルは良い餌だが、あれは誰にでも攻めるからで(腐男子目線)、俺とアラジンは普通に友人だ。
たまに燐と絡むと黒子にすげぇ良い笑顔で「ありがとうございます」とか言われるけど、違うから。自分が対象にされるとか分からねぇから。
一人混乱に陥るアリババに、アラジンは「ね?アリババくん良いだろう?」と小首を傾げて再度訊ねてくる。確かに最近、定例会に時間を割いてばかりだったなあと思わなくもないので、アリババは「おう」と応えた。
アラジンだって、アリババにとっては大切な友人だ。
アラジンは「ありがとう、楽しみにしているよ。バイト頑張ってね」と言うと、アリババの腕から手を離した。
戸口へと消える背中を見ながら、アリババはまだ混乱から抜け出せずに居たが、アラジンが後ろを振り向くことは無かった。
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「口を出さないんでは無かったんですか」
アリババの居る教室から出てすぐに声を掛けられた。静かな、落ち着いた声だった。振り返らずとも分かる。黒子だ。
「ふふ、そうだね。でも良い餌だろう?」
「あまり明白なのは好みませんが」
「そうかい?やっぱりフダンシってよく分からないや」
僕はアリババくんと遊べれば良いんだもの。